COLUMN — 自動化の運用

自動化した仕組みが
止まっていても、
3時間誰も気づきませんでした

請求書の自動送信、表計算のマクロ、毎朝のデータ集計。事務を自動化すると、そのうち「動いているか」を誰も見なくなります。この記事は、私たちの会社で朝の自動処理が3時間止まっていたのに誰も気づかなかった実例と、そこから整理した3つの点検ルールをまとめたものです。自社で自動化したものを1つ思い浮かべながら読んでください。
01

朝の自動処理が、3本とも止まっていました

私たちは内装金物の施工会社です。自社の事務や、Webサイトの運用の一部をAIに任せています。事務所のパソコン1台の中で、毎朝決まった時刻に自動で動く処理がいくつかあります。通販の注文が来ていないかの確認、サイトのアクセスの集計、データが書き換えられていないかの点検です。

2026年9月24日の朝、そのうち3本が止まっていました。

時刻起きたこと
6:52〜7:22朝の処理3本が順に動き始め、どれも最初の操作の直後で止まる
8:05・9:13その後に予定していた別の処理2本が、起動すらしない
10:12別の巡回をしていたAIが「朝の分の成果物が無い」と気づく

止まってから気づくまで、約3時間です。その間、私も含めて、人は誰も気づいていませんでした。

02

エラーにならない止まり方で、知らせが来ませんでした

処理がエラーで落ちたときは、知らせが届くように作ってありました。今回の止まり方は、それとは違っていました。

AIには、初めての形の操作をするときに「この操作を許可しますか」と人に確認を求める設定をしています。勝手に危ない操作をさせないためです。3本とも、その確認の画面を出したまま待っていました。朝なので、押す人はいません。

誰も押さない確認ボタンの前で、AIは3時間、行儀よく待っていました。状態は「実行中」のままで、エラーではありません。エラーではないので、知らせも飛びませんでした。

許可する操作は、前もって登録してありました。ところがAIは、同じ意味の操作でも、日によって少しだけ書き方を変えることがあります。登録は「一字一句同じかどうか」で照らし合わせていたため、その少しの違いで確認待ちになりました。

03

「自動化した」と「動き続けている」は、別の話でした

この3本は、作った日も、次の日も動いていました。だから私たちは「自動化できている」と思っていました。

足りなかったのは、止まったときに、それが人に届く経路です。エラーで落ちる場合の知らせは作っていましたが、「待ったまま動かない」場合の知らせはありませんでした。鳴らない警報器は、付いていないのと変わりません。

これは、AIに限った話ではないと考えています。表計算のマクロが途中で止まっている。自動送信の予約が、設定の変更で外れている。どれも、止まったこと自体は画面の中で静かに起きます。誰かが結果を見に行くまで、止まったことは分かりません。

04

止まったことに気づくための、3つの点検ルール

1と2はその日のうちに実施しました。3は以前から決めていたルールで、今回の件で意味がよく分かりました。どれも、自動化したものなら何にでも当てはめられます。

RULE 1

止まったことが人に届く経路を作る

処理そのものとは別に、「朝の成果物が決まった時刻にあるか」だけを5分ごとに見る小さな仕組みを足しました。AIを使わない仕組みなので、AIが固まっても一緒には固まりません。成果物が無ければ、スマートフォンに知らせが飛びます。

RULE 2

作ったら、わざと1回止めて確かめる

知らせの仕組みを作った直後に、わざと成果物が無い状態を作って、知らせが実際に届くことを確かめました。一度も鳴らしたことのない警報器は、鳴るかどうか分かりません。

RULE 3

「最後に動いた日」を書いておく

自動化したものの一覧に、最後に実際に動いた日を書いておきます。書けないものは、動いているか誰も測っていない、ということです。

3つのルールとは別に、確認待ちで止まった原因そのものも直しました。許可の登録を「一字一句同じ」から「この形なら可」に広げ、AIへの手順書には「この1行をそのまま打つ。前後に何も足さない」と書き足しています。

05

あなたの会社の自動化にも、3つを当ててみてください

自社で自動化しているものを1つ選んで、次の3問に答えてみてください。

  • 止まったら、誰に・どこに知らせが来ますか。 — 「エラーのとき」だけでなく、「結果が出てこないとき」にも知らせが来るかを確かめます
  • わざと止めて、知らせが届くのを見たことがありますか。 — 作った日に一度も鳴らしていない知らせは、動く証拠になりません
  • 最後に正しく動いたのは、いつですか。 — すぐに答えられなければ、その仕組みは誰も見ていない状態です

建設業の現場にも、似た話があります。安全点検表は、作った日は全員が書きます。1か月たつと、書かれていなくても誰も気づかなくなります。紙が悪いのではなく、「書かれていないことに気づく仕組み」が無いのが原因です。自動化も同じで、作ったあとに「止まっていることに気づく仕組み」まで用意して、はじめて手が離せます。

06

正直に書いておくこと

今回止まった処理の中には、通販の注文の確認も入っていました。注文が入っていれば、朝から10時過ぎまで誰も対応できていなかったことになります。私たちの規模では、その遅れはそのまま信用に関わります。

AIに仕事を任せること自体は、思っていたより簡単でした。任せた仕事が「本当に動き続けているか」を見るほうが、ずっと難しいと感じています。自動化の相談を受けるときも、作る話と同じくらい、止まったときの話をするようにしています。

本記事に出てくるAIは、Claude Opus 5.5(管理役)とClaude Sonnet 5(実行役)です。許可の設定や操作の中身は、セキュリティに関わるため省いています。

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NY

中芝 悠太

営業 / 現場代表

内装金物の職人として現場に立ちながら、昼は現場・夜はAI。自社の事務を約9割削減した実体験から、このチームを立ち上げた。現場の話が通じる窓口担当。

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